インタビュー / エッセイ

2014-02-12

福岡では子供はゴージャス

 

九州大学大学院 システム情報科学研究院

田中久美子

 

今日も双子は広く明るい笑顔あふれるたけのこ保育園に行っている。保育園には生後2か月から通っているが、優しい保育士やお兄ちゃんお姉ちゃんとの毎日が楽しみなのである。おいしいおやつも毎日出る。たけのこ保育園は九州大学の保育園で、オフィスにほど近い同じキャンパス内の建物にある。


 
福岡県は全国都道府県の中でも人口千人あたりの出生率において上位ランキングに入る。その理由として「九州は田舎だから」は当たらない。福岡市は都会である。東京から赴任した当初、その都会を楽しそうに歩く妊婦の数の多さにまず驚いた。この妊婦を支える産科は、空き状況に常に余裕を持っているという。機能だけでなく、ここの産科は素敵である。福岡に住む女性があこがれる豪華なホテルのような有名産科がある。おしゃれな産科で生まれた子供を支えるのは、夜開業している小児科である。緊急時には親の病気まで見ていただく事ができる。病気でいよいよ困ると、安価に病気の子供を日中預かってくれる病児保育があり、働く夫婦を支えている。


 
少子化の大問題を抱える一方で、保育園も産科も不足している同じ国の一角の状況である。福岡は、少子化だけでなく、首都圏でさまざまに体験した都市の他の大問題???たとえば、放置自転車、ゴミ回収、交通渋滞など???を解決する仕組みを採用している。この意味で、首都圏からやってきた者には、福岡は変わることのできる先進的な都会に見えるのである。その背景には、福岡に対してきちんと責任を取ろうとする地元の人々の心意気が感じられる。「女性の能力を生かす」との提言に対しても、表面的に形だけ整えるのではなく、自らの経験にもとづいて理想をデザインし、反対意見の中、実現にこぎつけているかに見える。その努力は行政だけではなく、個別組織の中にもある。九州大学でも、総長をはじめ組織に属する個々の経験を集約し、理想に向けて限りない努力が積み重ねられてきたのだ。そしてこの恵まれた環境ができあがり、そこへ特に何も知らずやってきた私には大いなる経験の機会を与えられることになったのだ。


 
インフラを変える偉大な努力の一方で、誰もができる小さな事もある。たとえば、日本の少子化問題の背景には、子供の主たる形容として「大変だ」があると個人的には思う。皆子供を巡って「大変だ」「大変だ」。「双子です」「大変だ」。妊娠・出産はもちろん「大変だ」。働く女性が子供を持つことは「大変だ」。そんなに大変なのかと延期し続けていたが、アメリカでの子供の形容に接して気が変わった。あちらでは、子供に関しては、beautiful, gorgeousという。オバマにはtwo beautiful daughtersがいる。``I have boy and girl twins.''  ``Oh, how gorgeous!''。妊娠・出産に関しても、あちらの女性たちは「あれほど楽しい経験はなかなかないわよ」。むろん、大人の配慮から「大変ですね」と気遣う側面はあるだろう。そして、子供は綺麗事では済まない。しかし、それを差し引いても私にとっては至福の経験である。子供は、しっかり見つめているつもりでも見逃してしまいそうなほど速い変容の中にあり、しかも変容の帰結はほぼ常にpositiveである。子供がいかにgorgeous=楽しく、愉快で、すばらしいものかをむしろ語りたい。


 
「大変」をゴージャスに変えてくれたのは、ここの環境である。テクノロジーのインフラが進んでいる日本においては、若者は住環境を選択する事ができる。出生率が世界の先進国の中でも特に低い少子化日本の中、都会福岡では偉大な努力の結果、子供はゴージャスである。