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2022.02.07 【報告】令和3年度ダイバーシティ推進トップセミナーを開催しました

 令和4年1月31日(月)、ダイバーシティ推進トップセミナー「変容しつつあるジェンダー概念の理解に向けて」をオンラインで開催しました。本セミナーは、平成27年度から大学執行部、部局長、管理職を主な対象として開催しています。第7回目となる今回は、国立成育医療研究センター分子内分泌研究部長の深見真紀氏と、京都産業大学教授/京都大学名誉教授の伊藤公雄氏のお二人を講師に迎え、最新の生物学的視点から性の在り方について学ぶとともに、現在も根強く残る性別役割分担意識について改めて学ぶことを目的に開催されました。
 ご講演では、初めに深見氏から「性スペクトラム:ヒトの性の新知見」と題したお話がありました。ヒトのすべての細胞には46本の染色体がありますが、このうちの44本は男女に共通しており、残る2本が「X, Y」染色体であれば男性、「X, X」染色体であれば女性になるといわれています。ところが、最近の研究では、身長や骨格、体重などの身体的特徴を除けばヒトの性には様々なバリエーションがあり、いわゆる「完璧な男性」「完璧な女性」は存在しないというのが通説になっていることが分かりました。深見氏は、こうした通説を支える根拠として「マイクロキメリズム*1 」や「加齢によるY染色体の喪失」などの例を挙げ、ヒトの性は二つの「男」「女」の郡ではなく、連続した表現型スペクトラムであると説明されました。
 次に、伊藤氏から「男性主導社会の黄昏を前に―学術分野でなぜダイバーシティが必要なのか?」と題したお話がありました。コロナ禍で浮き彫りになった男性主導社会の限界を指摘しながら、長期化した日本社会の停滞を打破するためには、これまで維持されてきた均質的で硬直的な中央指令型組織を改め、ジェンダー平等に向けて動き出すことが必要であると説明されました。また、ジェンダー過渡期を迎えたいま、性の多様性への視点と「女性」に対する差別が未だ続くことへの問題意識を同時に持つことが重要であり、ジェンダーを無視するのではなく、ジェンダーによる二元論を克服するために「ジェンダーの課題を常に意識する」姿勢が求められているとのお話がありました。
 ご講演後には、講演者を交えた討論と質疑応答の時間が設けられました。深見氏からは「子どものころから多様な性に関する知識を伝え、多様性を受け入れる器を育むことが大切」「男女の性差ではなく個性を活かした教育こそ必要ではないか」とのお言葉がありました。また、伊藤氏からは「女性が抱える心理的な不安や抑圧を解き放ち、本来持っている力を伸ばすためにはエンパワーメントが必要」「女性のアカデミアへの進出を進めるためには男性の働き方や生きづらさを見直し、誰もが活躍できる環境を整えることが重要になる」とのお言葉がありました。


*1 妊娠中の女性から胎盤を通して胎児に母体の細胞が移ること。もしくは、胎盤を通して胎児から母体に胎児の細胞が行き来すること。そのまま相手の体内に残るケースがある。


 昨年度に続き、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためオンラインでの開催となりましたが、学内の各キャンパスから教職員、学生の方を含め100名を超える方に参加いただき、誠に有難うございました。



男女共同参画推進室 相良祥子